「別れよ、うん」



銀さんの声は驚くほど冷たくて、よそよそしかった。
死んだ魚のような目は何も映してはいなかった。 たしかに最近ラブラブとかじゃないし、セックスもぜんぜんしてないし、キスだってしてなくて、 態度は冷たくなってたけど、 それでもオレは銀さんはオレのこと好きだと信じていた。今思うと、銀さんは態度で「別れよう」 って何回も訴えてきたんだと思う。よく気がつかなかったなぁ、オレ。
(鈍感すぎ) (でも昔は鈍感なところがかわいいとか銀さんいってくれたよ)






「やだ。別れたくない」

そういうと、銀さんは何かキモチワルイものをみるような目でオレを睨んだ。背中がゾクゾクッとし、 指先が冷たくなってきた。喉が乾いてくる。
いつのまにそんな目でオレを見るようになったの。いつのまに別れたいとか思うようになったの。






「そんなこと言ったって、俺はもうのこと好きじゃねーから」
「、っ…」
「じゃあな。サヨウナラお元気で、」






オレの家の玄関で靴を履きながら、銀さんは右手をひらひらとふった。オレは泣きながら その腕にだきついた。こういうことしたら銀さんは嫌がるなんてわかってたけど、 どうせもうオレのことなんて好きじゃないんだから、どうだっていいことだと思った。






「はなせよ」
「…オレなんでもするから。銀さんの気に入らないとこ、ぜんぶ直すから」






オレは歯の浮くような、虫唾の走るようなセリフを言った。
最初は同じきもちでつきあっていたはずなのに、いつのまにこんなにすれ違ってしまったんだろう。 あの頃はこんな日がくることなんて、夢にも思ってなかった。(はじまりにはおわりがあるはず なのに)






「銀さん、お願い」






かみつくようなキスをし、舌をすべりこませた。あまい味がする。不意の出来事に 銀さんは目をカッとみひらき、おどろいていた。
オレが銀さんの着物に手をかけたしゅんかん、銀さんはおもいっきり体を突き飛ばした。鈍い痛みが頭に走る。






「そーゆーのやめて。ほんとウザイから」

口を乱暴にふいて銀さんはでていった。そして、死ぬまで一度もオレの前に 姿をみせることはなかった。














罪木崩し






20060318
20060403/修正