大通りを歩いて何分もたたないうちに、黄色い看板が目印の薬局にたどりつくことができた。 元いたとこでも見たことあるような店だ。
1階は割と誰にでも実用的なものが売っていて、2階はコスメ中心の女性向けだ。
オレは薬局が好きだ。洗顔にしても歯磨きにしても、多様な種類があるから 見てて楽しい。しかも安い。もしもオレが女の子だったら化粧品のテスターで 何時間も遊んでるのだろう。
銀さんになかば強制的にいかされた薬局だけれども、オレはそれを楽しんでいる。


「(湿布、湿布…)」


何度か1階をぐるぐるして湿布をさがす。店員にきけばはやいんだろうけど、 自分で探すほうがわくわくするし、それは何か違う気がする。


「(あ、あった)」


下の方の段にあったので、しゃがみこんだ。
しかし種類が豊富だ。どれが一番きくんだろう、とか、どれが一番安いんだろう、とか、 いろいろ考えていたら時間がたりなくなる。はやく買ってきてあげないと。 銀さんのうわうわな右頬を思いうかべる。


「ずいぶん熱心に選んでるんですね」
右斜め上の方から声をかけられた。
オレは振り向くことはせず、そのまま湿布を選びつづける。


「ええ、ちょっと友人がケガをしたので」
友人の語尾が少しあがってしまった。だって、銀さんを友人と呼ぶには まだ日が浅くなれなれしいかと思ったから。


「大切な、友人なんですね」
「え?え、まぁ……」


何いってんだこの人と思いつつも、湿布を選びつづけるオレ。 2つの商品に絞り込むことができた。 どっちにしよーかな…値段が安い方か、少し高くても効きそうな方か。
…湿布なんてそうそう効き目とか変わんないよな?ただでさえ貧乏なのに 節約ぐらいしないと。オレは少し高い方を棚にもどして、値段の安い方をもって 立ち上がった。
そのとき、オレは、無防備だったんだと思う。




「忘れんな、ぜったい」




は?って思っていきおいよく振り向く。そこにはさまざまな商品が並べられている だけで人なんて立っていなかった。
え、なに今の。
「忘れんな」って何を?
さっぱりわからなかった。まったく、無防備だったのだ。
この言葉を――まだ先のことだが――痛感することになるとは、 このときのオレは知る由もなくて。
















→coming soon...


20060723