星空が見たかった。 いや、正しくいえばたくさんの星のなかで輝く、シリウスが見たかった。 なのに空はどんよりと曇っていて、そのかわりなのか、いつも顔をあわせている 人間のシリウスが木の枝の上に座っているあたしを見上げていた。 「なにやってんだよ」 あきれた顔でなげやりに言葉と白い息をはっしたシリウスは、いつも顔をあわせていて 見慣れているからといっても やっぱり美形なのはかわらない。 グリフィンドールのマフラーの色が暗闇のなかでういてみえる。 「星が見たかったんだ、」 「こんなに寒いのに?」 「うん、こんなに寒いのに」 「バカか、風邪ひくぞ。あ、お前はバカだから風邪なんてひかないか」 「うっさい」 トトロに出てくるようなめっちゃ高い木の枝の上に座って、満天の星空(とくにシリウス)を見るのがあたしの夢だった。小さいころから、 憧れてた。 いま座っているのはそこへんに生えているような地上から1メートル60センチくらいの 枝の上だけどね。(だって木登りって想像してたよりむずかしい…) 日本じゃ空は汚いし、シリウスは冬にしか見れない。 あたしの計画では、季節はぜったい 夏だと決めていたのに。 あきらめきれないあたしは、本を読んでオーストラリア とかそこらへんの南半球の外国とは、季節が逆ということを知った。 ホグワーツに入学することが決まって、あたしは喜んだ。夏に星が見れると 思ったから。 当時のあたしはめっちゃバカで、(いや今もバカだけど、もっと)地図帖を開いて みるまではイギリスの位置なんか知らなかった。 イギリスも日本と同じ北半球にあるということを、知らなかったのだ。 そっからもう、なんかふっきれて冬でもいいからきれいな星空(とくにシリウス) をがむしゃらに見たくなった。 「ところで、シリウスはなんでここに居んの」 「なんでって…宿題やってたらが外に出てくの見えたから」 「それでわざわざ来たの?」 「悪りぃか」 「シリウスってなんだかんだいってあたしのこと心配してるよね」 「はっ、何言ってんだよ。また何かとんでもないこと、しでかすかと思ったんだよ。 そしたら、オレにまでとばっちりが来るじゃん」 「あーそうですか、」 「そうですよ」 「それなら、あたしはただ星が見たかっただけだから、もう帰んなよ」 なんていうか、あたしの態度は可愛くないなって自分でも思う。外見も 可愛くないのに中身まで…って。そら彼氏ができるはずがない。 ってか友達もあんまいないし。スリザリンなのにグリフィンドールにしか ほとんど友達がいないってどーゆことよ。 むなしくなってきたのと同時に、つめた〜い風まであたしを おそってきた。 薄手のパジャマのうえに ローブを羽織っただけで、マフラーも手袋も何にもしてないから ダイレクトに寒さがつたわる。 「う、」と体をみぶるいさせたしゅんかん、首にかわいた暖かい感触が広がった。 それをつかんで見てみると、マフラーだった。 グリフィンドールの。 下を見ると白い首がむきだしになったシリウスが両腕を広げていた。 「さっきのは冗談。のこと心配だから来たんだよ。ほら、はやく降りて来い」 あたしがずっと求めていたは星のシリウスで、少しはにかんであたしを追いかけてくれる 人間のシリウスじゃなかったはずなのに、なんでだろう、いま、ものすごくシリウスが愛しい。 |