とりあえずあの夜からあたしはシリウスのことが好きになったわけだ、うん。
まだ首に、シリウスのかわいた暖かいマフラーの感触が残っている。
あたしのこと心配して来てくれたって、もしかしてシリウスもあたしのこと好きなのかな なんて図々しい妄想をくりひろげる。でも、よく考えればさぁ恋愛的なイミで 好きじゃなくても、元々友達なんだから心配ぐらいするよね。
それにつけくわえるならば、シリウスは面食いだからあたしみたいな普通な子を 好きになるはずがないというか…それにモテるしあいつ。知らないだけでもう 彼女だっているのかも。




、」
「なにー?」
ぬくぬくした談話室。
あたしは1人がけのソファーにふんぞりかえって返事をした。頭を逆さにすると 首のあたりが急に苦しくなって「うぇ」っとなった。
あきれた顔のセブルスが立っていた。




「呼んでる」
「誰が」
「グリフィンドールの、シリウス・ブラック」
「え!なんでシリウスが呼んでんの?」
「我輩が知るわけないだろ」
図書館で遭遇することとか、そういうことはよくあったけど、 シリウスがわざわざ来るなんていうのは初めてだ。
なんでだろ、なんでだろ、
もしかして……こ、告白?
いやいやいやいや!妄想もいいかげんにしろあたし!そういい聞かせるのに心臓はばくばく。






「よぉ」
「よっ、」
ポケットに手をつっこんで何気なく立っているけれど、それだけでかなりかっこいい。 ホレる前からかっこいいとは思ってた。今ではめちゃくちゃかっこいいと思ってる。




「どーしたの?シリウスが来るなんて珍しいね」
「お、おう」
目がシリウスの白い首にいってしまう。もわもわとした違和感。
なんか忘れてる気がする……なんだろう、




あ、




「マフラー!」
返すの忘れてたーっ!と叫びながらあたしは談話室にリターンしてた。 後ろでシリウスの「ちょ、おい」という声が聞こえた。そしてそのまま 階段を駆けていって部屋まで戻る。
ルームメイトが「今度はなにあわててんの」とけげんそうな顔をしてみせた。
そうか、マフラーだったのか。シリウスはマフラーを返してもらいたくて、来ただけ。
あたしにあいたくて、とかましてや告白なわけがなかった。
さっきまでばくばくだった心臓は急に動きをおそめた。ちょっとだけ、いやかなり期待 してたのだ。シリウスとの進展を。
…恋ってつかれる。
机の上にきれいにたたんだグリフィンドールカラーのマフラーをつかんで、 あたしはとぼとぼと来た道を歩いた。






「ごめん…返すの忘れてた……」
「あ、いいよいいよ。オレも忘れてたし、」
「ごめん…」
「いいって、」
「じゃーね、」
マフラーも返しおわったし、精神的に疲れたし、あたしは談話室に戻ろうとした、ら。




「ちょ、まてよ」
「へ?」
シリウスに呼び止められた。なんだろ。もう期待することはしない。マフラー汚れてたかな。




「今日来たのは、マフラーのことじゃなくて…」
「…なに?」
「その、あのとき言いそびれたことがあって、」
「なに?」
頭をぽりぽりとかくシリウス。そんな仕草もすてきに見えるくらい、あたしはもう 参ってしまっている。




「……どうしたのよ」
「あー…っと」
「んもう早くいいなさいよ」
「えっと、って、彼氏とか今いないよな?」
「う、ん。いないけど……?」
「―よかった。…それで、」






「あのさ、オレと――」














これからはじまる
060817