人を愛すということは、その人を殺したいと思うことといっしょだと思う、 とオレが言うと、沖田さんの目が少しゆらいだ。
そして、
クレイジーでさァ
とにんまり笑った。
限りなく白にちかいピンク色の桜はここ数日間がみどころらしい。 だけど今夜は予報はずれの雨に打たれ、かなり大量の花びらが 地面に落ちてぬれていた。
もったいない。
沖田さんはいくら春だからといって、薄着をしすぎだ。
淡い落ち着いた色の着物だけで、羽織は着ていない。かさをさすのが遅かったから、 細い線をした体が透けて見える。




「じゃあ、」
沖田さんはオレより少しだけ背が高く、顔の整い具合は比べものにならないくらい良い。


「逆に、愛されたいと思うのは、その人に殺されたいってことですかィ?」
「…そういうことになりますね、」
沖田さんは無残に散る桜をみて何か楽しいのだろうか。
それに、雨の独特のにおいがオレは苦手だ。
こどくのにおい。




は、殺されたい人でもいるんだろ」


またそのにんまりとした笑い。
オレに言わせたい、という無言の圧力。
桜の花とおなじくらい沖田さんの顔は白い。
ぼぉっと立っていると、桜の幽霊みたいだ。




「しってるくせに」
こんな雨の日の夜中に、いきなり叩き起こされたのにもかかわらず 愛想よくつきあっているオレをというものを少しでも考えれば 沖田さんの頭でもすぐわかるはずだ。わざわざきくなんて、そんなの、ずるい。




「……俺ァ、お前をどうするかわかりませんぜ?」




そんなの別にどうでもいいと思った。
つながれた沖田さんの手はぞっとするほど冷たい。
愛してくれればそれでいいんです、たとえどんな形でも、愛して、ずっと。














それはまさに、他殺願望


20060501