ゴロゴロと怪しい音をさっきまでたてていた黒い雲から ざぁざぁと雨が降る。 ちくしょう傘なんてもってないぞ、とアスファルトの上にころんと 転がっていたちょうどいい大きさの石をけろうと足をなげた。 からぶり、した。 ああんもう最悪やん、雨が体に容赦なく降り注いで、 頭のてっぺんからつめさきまでじんじんと冷えてゆくのを感じた。 服がべたべたして、きもちわるい。 くちびるまでつめたくなって、オレはぶるぶるっと身震いをした。 「、何やってんの」 べーつに、と答えると高杉はむすっと顔をしかめた。(と思う) そこらへんにある水溜りをひょいひょいっと高杉はこえて、 オレの後ろから傘をさした。 ぷつっぷつっぷつっぷつっぷつ 今度は傘に雨が容赦なく降り注ぐ。 雨の粒が傘にあたる音の間隔がやけに短くて、あらためて雨の勢いの強さを しった。 寒さから少し解放されて、感覚がすこしずつ戻ってくる。 「さむい」 「あたりまえだろ、バーカ」 「ううん、バカじゃない」 「や、バカでしょ」 「高杉よりは頭いいもん」 「オレより、はな」 「ほらね」 あきらかにバカまるだしの会話。くすくすと笑うオレ。 つられて高杉もくっくと声をころして笑う。 家きてあったまろ、と高杉がオレの左横にきて歩き出す。 歩くたび、高杉の肩が濡れる。 「今日ってなんかおもしろいテレビあったっけ、」 「オンエアバトル」 「あーあったね」 「みないの、」 「たまにみる、かな」 「毎週みろって、面白いから!今日は星野卓也が出るんだぞ!!」 「ごめんごめん」 星野卓也は高杉が好きなお笑い芸人。その名前を聞いてオレは またぶるぶるっと身震いをした。 高杉は、風邪ひいたんじゃねーの、と心配するような目でオレを見た。 そうかも、とオレは小さくうなずいた。 ぷつっぷつっぷつっぷつっぷつぷっつ どんより暗い空はオレの心をあらわしているみたいだ。 勇気がないだけのくせに、ぐだぐだとそこに居坐ることを酷く嫌ってい る。 それでも、たまには勇気をだそうとしたことはある。 けっきょくは、オレはだしかけた言葉を飲み込むしかないんだけれ ど。 好き 20060418 |