「土方って童貞?」 オレとと友達の3人のエロ話が終わって、その友達が「美女か野獣」の 再放送みるからと、教室を足早にさっていったあと、がオレに訪ねた。 夕日に透ける脱色した髪。白い肌。カーテンがぱたぱたと乾いた音をたて、ゆれた。 「…あぁ」 この「…」っていうのは「童貞って認めちゃったらコイツひくのかなぁ」っていうためらい。 だってはキレイな顔してるし、めっちゃモテるから、ぜったい童貞じゃない。 童貞じゃないやつに童貞の劣等感はわからない、とオレは思う。 「安心しろ、オレも童貞だ」 そうけらけらと笑うので、オレはびっくりして「まじでかァァ?」と言った。 「おう、まじで」 は答えた。 「あーあ、はやく童貞卒業してーよ」 「オレもオレも」 「どっかにいい子いねーかなぁ」 「ほんとだよ」 静かな教室内にオレたちの声と、開けっ放しの窓から聞こえる吹奏楽部の「空も飛べるはず」が響く。 (夢をぬ〜らしたなーみーだがー) 窓の外はほんと感動するくらいキレイだ。空は下の方はまだ夕方なんだけど、 上の方はもう夜がはじまっていて、白い星がところどころでていた。 オレがいうのもなんだけど、ロマンティックな情景だと思う。 前の席に座っていると目があう。(いや、二人でしゃべってるから当たり前なんだけど) こんなロンティックな情景のせいで、オレの心臓はどくんとはねた。 苦し紛れにこんなことを言ってみる。 「星キレイだなぁ」 「うん」 それから二人とも何もしゃべらなかった。カーテンがぱたぱたと派手にゆらめく。 窓際の席に座ってるから、そのカーテンがオレたちの顔にあたる。が「うわっ」とか 言ってもがいた。 もがくの手と、カーテンをまとめようとするオレの手が不意に重なった。 何気ないふりしてはなそうと思ったが、がオレの手をぎゅっと掴んできた。あたたかい手だった。 時間がゆっくり、ゆっくり、とまった。 「なぁ土方。オレに童貞ささげてみない?」 挑発的な目でが笑った。ごくん、とつばをのみこむくらい妖艶だった。 オレは一瞬ためらったが、断る理由なんてどこにもなかった。 を落書きいっぱいの机の上に組み敷いた。 学ランの襟からのぞく白い首にそそられながら。 「あぁ、望むところだ」 |