あぁもうなんでオレたちは出会ってしまったんだろう。初めて出会ったあの日からずっと そればっか考えている。






オレはトシを見上げている。
そしてトシはオレを見下している。ギラギラと照る太陽の光を反射する、鋭利な刀で喉元をつきつけながら。
死ぬのなんて怖くないなんて、ウソだ。いつかトシに「お前に殺されるなら本望だよ」と言った。 そのときは本気のつもりだったけど、実際そうなってみると、それはただのキレイごとでしかなかった。


、か。これは大物でさァ」


真選組の沖田総悟がトシの後ろからひょいっとあらわれた。沖田の金色の髪も太陽の光を まぶしいほどに反射していた。手に持つ刀にはオレの仲間の誰かの血がこべりついている。 沖田はオレの喉元につきつけられていたトシの刀をどかせ、自分の刀をつきつけた。 沖田のつきつける力はトシに比べずっと強く、ごくんと唾を飲み込むだけでオレの喉に深く つきささりそうだった。
オレが顔を歪ませると、沖田はうれしそうに唇の片方の端をあげて笑い、刀を勢いよく 振りかざしてオレの着物を裂いた。嫌な予感が頭の中をよぎる。




「オレ最近たまってんでさァ、土方さん。殺る前に一発ぶちこんだっていいでしょう?」
「おい、」
沖田が覆いかぶさってくる。 やぶれた着物にすべりこませた手を土方さんが制止するようにつかんだ。
「あわてないで下せェ。後で土方さんにもヤらせてあげますから」
「…ッ総悟やめろ!に触んじゃねーよ!」
「ト、シ」
「!大丈夫か?




その様子をみて沖田は大きな目を カッとひらいて、オレとトシを交互にみた。そしてひとこと「そーいうことなら」と言い、 まわれ右をして死体をまたぎながら消えていった。




「はやく殺して、」
「…」
「真選組の鬼の副長でしょ。攘夷派1人殺せないでどうすんの」
「…守ってやれなくてごめん」
「気にすんな、最初っからそんなの期待してねーよ」
「ごめん、な」




泣いているトシの顔が、オレが見た最後の光景だった。
できることなら、「攘夷派」のと「真選組」の土方十四郎じゃなくて、 「ただの」と「ただの」の土方十四郎として出会いたかった。
今の時代は、オレたちが自由に生きるには、つらすぎたんだ。




千年後くらいには攘夷派も真選組も必要なくなるような世界がきっと広がっているんだろう。
そのときまで、ばいばい、トシ。








『ばいばい』


















それではまた千年後に












20060416