気づいてしまった、 総悟の想い。 あたしを見守る視線や、隣の席の山崎に嫉妬する視線。態度。 幼馴染というあいまいな関係のあたしたちに、それは重くのしかかる。 気づきながらも、知らないふりをしてた。 このちょうどいい温度を壊したくなかったから。 「なんでオレのこと避けてるんでさァ」 避けてないし、とそっけない返事をした。 総悟が傷つくのが手にとるようにわかる。 しまったという罪悪感と、これで幼馴染という関係を守れたという安心感。 それらが入り混じって、胸がざわざわする。 「最近冷たいですぜェ」 「冷たくないよ」 「冷たいって」 「どこが」 「だから、そーゆうトコ」 と言って総悟はあたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。 軽いスキンシップだ、総悟のきもちに気づく前まで頻繁にしていた。 前なら「もー、なにすんの」って笑いながら言えたんだろうな、と考えながら 体は拒否反応を示していた。 「…やめて」 あたしは何をやめてもらいたかったんだろう。 スキンシップをやめてもらいたかったのか、 恋心を抱くのをやめてもらいたかったのか、 両方かもしれない。わからない。 あたしは頭にのった総悟の手をふりほどいてそう言っていた。 おどろいた総悟の瞳。 すこし間があって、総悟は下をむいてつぶやいた「ごめん」 あたしも総悟と同じく下をむいた。 シャー芯で汚れに汚れた教室の床がそこにあるだけで、他には何もないのに、 あたしたちはずっと下をむいていた。 「に振られたかー!?かわいそうアル!」 教室に神楽ちゃんが入ってきた。 スキップしながら総悟の背中をバシっと叩いた。 「……うっせ、振られてねーし告ってねーし!」 いつもの明るい調子で総悟が答えた。 そして逃げだすようにあたしの前を通りすぎて、神楽ちゃんのあとを追う。 無意識のうちにため息がでた。 あたしのうしろの方で、2人のぎゃあぎゃあと言い争う声がきこえる。 あの2人ってあんなに仲良かったっけ、とイラつく自分におどろいた。 拒否したそばからこれなの。 きっと、総悟のなかの抜けたあたしの部分に、神楽ちゃんはいともたやすく 入っていくんだ。 幼馴染の関係を守れたのに、なんでこんなに心が沈んでるんだろう。 それはきっと、 あぁ ばかだあたし。 ぽっかりと心にあいた空洞。 埋めることは、今さらできない。 06/12/02Time waits for no one. |