ひろい背中。
鍛錬に刀の手入れをするこの男を、あたしは本当にいとおしいとおもう。
絶対に口には出さないけど。出せないけど。
あたしは寝たふりをしながら、高杉の背中を穴があくくらい見つめている。
布団のなかは十分暖かくなっていた。


眠れない。


夜が明けてたら高杉が人を殺しに行くと思うと心臓がバクバク鳴る。
いつものことなのに。
慣れないな、心配で仕方がない。


高杉は絶対また帰ってくる。
コンビニに買い物をすませてきたような何気ない様子で、「ただいま」と言うだろう。
その度あたしは良かったと思うし、泣き崩れそうになる。


ピカピカに磨かれた刀に反射して高杉の顔がうつった。
いつもと変わらない無表情。
あたしは慌てて目を閉じた。
まぶたのうらに光の残像が残っている。


本当は人なんて殺してほしくない
ずっと一緒にいてほしい
四六時中飽きるまでぴったりと寄り添って
そして刀を愛するようにあたしのことも愛してほしい
とりとめのないことを考えながら、またあたらしい一日がはじまる。











06/12/17ピットスポルム