朝っぱらからめっちゃ楽しそうに騒いで登校する3人組を、
あたしはめっちゃ妬ましそうに4階の教室の窓から凝視する。
同じクラスの、イケメン野球少年と、イケメン不良少年と、ださいツナ。
でも、なぜだか最近、ださかったはずのツナは女子に人気だ。
かっこよくなってきたと彼女らは言う。
うそだぁ、
あたしはバカみたいに笑った。
うそじゃなかった。そんなの知っていた。ツナはかっこよくなった。 認めたくなかった。






本来なら、あたしがあそこにいるはずなのだ。
窓ガラスにべったり指紋をつけて、彼らに見入る。
あそこというのは、ツナの隣のこと。
事実、ずっといたじゃないか。幼稚園から小学校、中学の春まで。
ださくて、いじめられっ子のツナをずっと守ってきたのはあたしだと、自負している。
なのに――
なんで、急に来たヤツらにとられなきゃならないの。
なんで、ツナはあたしではなく、アイツらを選んだの。






よくわからない。
ツナはあたしを避けている。思い込みではなく、ほんとうに。
ちゃん、最近ハブられてない?』
ちょっと前、偶然耳にした会話。
うすうす気づいていたけれど、いざ他人に指摘されると結構こたえた。
くやしかったのか腹が立ったのか悲しかったのか、今じゃ覚えてないけど、 泣いたことだけ覚えている。






不意に外を歩いているツナが顔をあげた。
そしてあたしのいる窓を見た。
まずい、と思ったときには視線がかち合っていて、私は心臓がきゅっと縮まるのを 感じた。





思考、停止。






だけどすぐに、
ツナは、あたしの動揺など知らないかのように、ぶつかった視線をはずし、 仲良しこよしの彼らとの会話にもどっていった。






がらがらとあたしのなかの何かが音を立てて崩れる。
もう崩れるものなど何も残っていないと思っていたのに。
みにくい嫉妬。わかってる。
ツナが誰と仲良くしようがツナの勝手だ。
だけど、なんだろう、なんていえばいいのかな。
おいてけぼり。






そう、あたしはさみしいんだ。








070404/おいてけぼり