ニュース番組はすぐおわった。
銀さんはおわるとき、「お前も色々気をつけろよ」といった。そんなこといわれても 向こうから勝手に近づいてくるんだよ…
明日の全国の天気予報が入る。東京は晴れ。
もういいや、と思ってテレビのスイッチを切る。ブラウン管のテレビは どことなく懐かしい。
とたんオレたちの会話は途切れてしまった。
いや元々そんな喋ってなかったけどさ。
けっこうこういう沈黙ってニガテなんだよね、オレ。
どうやら銀さんもニガテらしく、頭をポリポリとかいたり何度も足を組みなおしたり していた。
そりゃー今日出会ったばっかの人間とわいわい喋れるわけないもんなァ。


「もう寝るか?」
「そー…、だね」




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「うわーなんか修学旅行みたい」
オレがそう言うと、銀さんはへらっと笑い、こう返した。
「どっちかっつうと修学旅行っていうより、新婚旅行だな」
今度はオレが笑った。
ほら、修学旅行って小さい和室にみんなで布団しいて寝んじゃん?万屋の この寝室も今そういう状態なのだ。銀さんが新婚旅行と言ったのは、 布団が2組だけだから。たしかにそうかもしれない。 って…ありえないけど。
もぐりこんだシーツはオレがいつも寝ているシーツとは感触が微妙に違っていて、 ひんやりとしていて気持ちいい。


「電気消すぞー」
オレがうん、と言う前にすでに視界は暗くなっていた。
横で銀さんが布団にもぐりこんでシーツが擦れる音がする。


「ねぇ銀さん」
横を向きながらいう。まだ目が暗闇になれていないから、まったく銀さんの顔は 見えないけど。


「ん?」
「オレやっぱ思ったんだけど、」
「うん」
銀さんがこっちを向く。(寝返りをうつ音が聞こえた)


「居候しっぱなしじゃいけないから、何か手伝いたい、んだよ」
「うん」
「だからさ、」
「うん」
「これからよろしくね」
「うん」


なんとなく恥ずかしくなって、銀さんがいる方とは反対側に寝返りをうつ。
沈黙。
時計の音と、ときどき車の通る音が聞こえるだけ。
でも嫌な感じの沈黙ではなかった。
もう銀さんは寝てしまったのかもしれない。
すると後ろからこう聞こえてきた。


「おやすみ、


おやすみなさい。
ふいに寝たふりをしたくなって、心のなかでつぶやいた。



















やつら1


20060622