分厚いカーテンの隙間からは一筋の光が畳の上できらめいている。
ああ、朝だ。
腰とか肩とか足とか、体全体が熱くて思いので目が覚めた。
ぼんやりまぶたを開けてみるとそこには銀さんの端整な顔があった。
まつ毛、なげー…ってそんなことに関心してる場合ではなくて、


あつい、あつい、あつい、あつい、おもい、おもい、おもい、おもい、


なんだろこの人はオレのことを丁度いい抱き枕だと思っているのだろうか。
ずいぶん乱暴に抱きついてくれる。
とにかく巻きついている足と腕をどうにかしようと奮闘してみても、 ビクともしない。朝からつかれた。
それに銀さんはこんなにも気持ちよさそうに寝ている。
起きるまで待ってあげてもいいかなと思いはじめたとき、 枕元の障子がスパーンとひらいた。
顔だけそちらに向けると、わなわなと神楽ちゃんが仁王立ちをしている。




「ぎゃー!!ほもヨー!!」


耳をつんざく大きな声。
銀さんが目覚める前に、神楽ちゃんはその端整な顔に見事な蹴りをおみまいしていた。
不本意ながらオレたちは神楽ちゃんの心にトラウマを植えつけてしまったらしい。




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「なんでオレだけ蹴るかなァ…」
チョー痛い、と銀さんは右の頬に氷と水でいっぱいにしたビニール袋をくっつけながら言った。
たしかに痛そう。右頬は青色を通りこして紫色っぽくなっている。
それでも神楽ちゃんにギロリとにらまれて、 理不尽そうにオレをにらむ。 いや、にらまれても…。


「…なんでオレのことにらむんだよ」
「にらんでませんよ、さん」


ふふふ、と黒い微笑み。ぜったい「後で仕返ししてやっからな!」って思ってるよ、 この人!ってかオレのせいじゃないし!銀さんが勝手に抱きついてきたんだから。


「てか神楽、さっさと定春の散歩いってこいや」
「うっせホモ。言われなくてもいくわホモ」
「ホモ言うな」
「ゲイ」


にやりと神楽ちゃんが笑って、巨大な定春という犬を連れて行った。


















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20060709(なんだかよくわからない展開に)