「オレのせいじゃないけどごめんね」
神楽ちゃんが出て行ったあとそう言うと銀さんは、別にいいけど、と返した。
なんだかその言い方が冷たかったのでオレにたいして怒ってるかと思った。
すると銀さんもオレと同じことを思ったらしく、慣れてるから大丈夫、と笑ってつけたした。 右頬を気にしながら。


「それにしても痛い」
「うん、痛そう。紫になってるもん」
「え、紫?」
「うん紫」
「そこまでなってんのかよ…ちょっと鏡みてくる」


よっこらせとソファーから立ち上がり、洗面所のほうへむかう。フローリングのどたどた という音。窓の外からきこえる朝の音。 それらが妙にリアルで急に実感する。やっぱりオレは「ここ」にいるのだ、と。


「すっげー紫!」
興奮にも似た、銀さんの悲鳴がきこえてきた。うわうわうわヒデー顔。 外でれねーじゃねえか。うわうわうわーどうしよ。うわうわうわうわうわ…えーっ。 ちょ、うわうわうわー…。


「うわうわ言いすぎー」
洗面所にいる銀さんに聞こえるようなちょっと大きい声でさけぶ。
だってほんとうにうわうわ言いすぎだったから。


「だってよー、こんなに紫だったらうわうわ言いたくなるぜ」
洗面所からひょっと顔をだす。
氷をあてて余計に紫になった右頬は、たしかにうわうわだ。


















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20060721