万屋のブレックファーストは、クラッカー5枚に牛乳というなんともシンプルなものだ。
といっても大食いの神楽ちゃんはそんなもんで済むわけはないので、
どっかのラーメン店の「よくある特大ラーメンたべきったら賞金あり」というのを毎日の
朝食にしてるらしい。朝からラーメンかよ!って思ったけど、なかなか神楽ちゃん
らしい気もする。 新八くんは家で食べてからの出勤だ。 オレは大食いでも、家があるわけでもないので、銀さんといっしょにそれらを食す。 午前9時。いつもより2時間おそいブレックファースト。テレビは奥様方に人気の ワイドショーになっている。 「ねー銀さん、ジャムちょうだい」 「は?」 「ジャム。いちごジャム」 「おいおいどこのセレブだよ」 「……な、ないの?」 「あるわけねーじゃん」 どんだけだよ…と思いながらクラッカーをほおばる。 表面は塩味なのに中身は少しあまい。でも、おいしいとかまずいとか、そういう次元の 食べ物ではない。居候のやつの言うことではないだろうけど。 「ごちそうさま」と言って席をたった銀さんを眺める。毎朝こんな質素な食事でよくだいじょうぶだよな。 ワイドショーでは昨日の夜にやっていたニュースと同じのがやっている。 「ぶっそうですねェ」コメンテーターのひとりがつぶやいた。犯人の特徴は、 若い人間の男、細身、身長は170くらいとのことだった。ぶっちゃけそんな特徴のやつは どこにでもいると思うけど、テレビではクソマジメに報道されている。 「湿布」 「え、」 「湿布がない…」 すでに朝食を食べ終わっていた銀さんは救急箱をあさりながら呟いた。 オレはコップになみなみとそそがれた牛乳を飲みこんだ。なめらかな感触がのどの 奥に広がる。 銀さんは「どーしよー」と困った顔をしながらあからさまにオレをチラ見する。 そう、あからさまに。 「…オレ買ってくるよ」 「マジで?やさしーな!」 銀さんが言わせたよーなもんじゃん! →4 20060721 |